介護施設や病院でベッドを導入する際、高齢者が使いやすいベッドとして安全性と操作性を両立させる必要があります。
適切な高さ調整機能、分かりやすいリモコン、転落防止機能が重要です。
しかし機能が多すぎると操作が複雑になり、逆に使いにくくなる場合があります。
特に認知機能が低下した方にとっては、シンプルで直感的に操作できるベッドが適しています。
本記事では、高齢者が使いやすいベッドの条件と、安全性を確保しながら自立を支援する機能について詳しく解説します。
高齢者が使いやすいベッドの条件
高齢者が使いやすいベッドは、適切な高さ調整機能、分かりやすいリモコン、安全性の高い構造という3つの条件を満たす必要があります。
適切な高さ調整機能は、高齢者がベッドから立ち上がりやすくするために重要です。高齢者は膝や腰の筋力が低下しているため、ベッドが低すぎると立ち上がりが困難になり、高すぎると足が床に届かず転落のリスクが高まります。床からマットレス上面までの高さを35cmから45cm程度に調整できるベッドが、多くの高齢者にとって使いやすい高さです。身長や身体機能に応じて、個別に最適な高さに調整できることが重要です。
分かりやすいリモコンも高齢者の使いやすさに直結します。ボタンの数が少なく、どのボタンがどの機能に対応しているか一目で分かるデザインが理想的です。ボタンに色分けがされていたり、大きな文字やイラストが表示されていると、視力が低下した高齢者でも操作しやすくなります。ボタンを押した時の感触がはっきりしていることも重要で、確実に操作できたかを触覚で確認できます。
安全性の高い構造も必須条件です。サイドレールが適切な高さと強度を持ち、高齢者が掴んで体を支えられることが重要です。ただしサイドレールが高すぎると、高齢者が乗り越えようとして転落するリスクがあるため、適切な高さ設定が必要です。ベッドの最低床高が低いことも安全性を高めます。床から25cmから30cm程度まで下げられるベッドであれば、万が一転落した場合でも怪我のリスクを軽減できます。
操作の簡便性も重要です。高齢者が自分でベッドを操作できることは、自立心を保つために大切です。背上げのみの1モーターベッドは操作がシンプルで、高齢者にとって使いやすい場合があります。3モーターベッドは機能が豊富ですが、操作が複雑になるため、認知機能が低下した高齢者には不向きな場合があります。
高齢者にとって使いやすいベッドは、立ち上がりやすい高さ調整、直感的に操作できるリモコン、転落を防ぐ安全構造という条件を備えています。
次に、高齢者向けベッドの機能と選定ポイントについて詳しく解説します。
高齢者向けベッドの機能と選定ポイント
高齢者向けベッドの機能は、背上げによる起き上がり補助、高さ調整による立ち上がり支援、サイドレールによる安全確保が重要です。
背上げ機能は、高齢者の起き上がりを補助する重要な機能です。ベッドから起き上がる際、背上げを30度から45度程度にすることで、上体を起こしやすくなります。高齢者は腹筋や背筋の筋力が低下しているため、フラットな状態から起き上がるのは困難です。背上げ機能により、少ない力で起き上がれるため、自立を支援できます。ただし、背上げの速度が速すぎると高齢者が不安を感じるため、30秒から40秒程度かけてゆっくり動作するベッドが適しています。
高さ調整機能は、立ち上がりを支援する機能です。高齢者がベッドから立ち上がる際、足裏全体が床に接地し、膝が90度程度に曲がる高さが最も立ち上がりやすい高さです。一般的には床からマットレス上面までの高さが35cmから45cm程度ですが、高齢者の身長や身体機能により個人差があります。ベッドの高さを調整できることで、それぞれの高齢者に最適な高さを設定できます。
サイドレールは、安全確保と移動補助の両方の役割を果たします。高齢者がベッド上で体位を変える際、サイドレールを掴むことで安定して動作できます。夜間にトイレに行く際も、サイドレールを伝って安全にベッドから降りられます。ただし、サイドレールの高さは重要で、高すぎると高齢者が乗り越えようとして危険です。マットレス上面から20cmから25cm程度の高さが、多くの高齢者にとって適切です。
リモコンの配置も選定ポイントです。高齢者が寝た状態で手を伸ばせる位置にリモコンを配置できることが重要です。リモコンをベッドサイドレールに固定できるホルダーがあると、紛失を防げます。夜間でも操作できるよう、ボタンにバックライトが付いていると便利です。
キャスターの有無も考慮します。施設では清掃時にベッドを移動する必要があるため、キャスター付きが便利です。ただし、高齢者が立ち上がる際にベッドが動いてしまうと危険なため、キャスターにロック機能が付いていることが必須です。ロックの操作が足で簡単に行えることも重要です。
高齢者向けベッドは、起き上がりを補助する背上げ、立ち上がりを支援する高さ調整、安全を確保するサイドレールという機能を備える必要があります。
次に、施設で高齢者が使いやすいベッドを導入するメリットについて解説します。
施設で高齢者が使いやすいベッドを導入するメリット
施設で高齢者が使いやすいベッドを導入するメリットは、利用者の自立度向上、介護者の負担軽減、転倒事故の減少です。
利用者の自立度向上は、最も重要なメリットです。高齢者が自分でベッドから起き上がり、立ち上がれることは、自立心を保つために重要です。適切な高さ調整機能と背上げ機能により、介護者の手を借りずに起き上がれる高齢者が増えます。自分でできることが増えることで、高齢者の生活の質が向上し、意欲的な生活につながります。50床の施設で使いやすいベッドを導入した結果、起き上がりに介助が必要な利用者が20%減少した事例もあります。
介護者の負担軽減も大きなメリットです。高齢者が自分で起き上がれるようになると、介護者が起き上がりを介助する回数が減ります。1日に何度も行われる起き上がり介助の負担が減ることで、介護者の腰痛予防にもつながります。また、高さ調整機能により、介護者が移乗介助やおむつ交換を行う際に、適切な高さに設定できるため、作業効率が向上します。
転倒事故の減少も重要なメリットです。高齢者がベッドから降りる際の転倒は、施設で最も多い事故の一つです。適切な高さ調整により、足裏全体が床に接地する高さに設定できるため、降りる際の安定性が向上します。サイドレールを掴んで降りられることも、転倒予防に効果的です。最低床高が低いベッドであれば、万が一転落した場合でも怪我のリスクを軽減できます。
施設の評価向上にもつながります。入居検討者や家族が施設を見学する際、ベッドの機能性や使いやすさは重要な評価ポイントです。高齢者が使いやすいベッドを導入していることは、施設が利用者の自立支援と安全性を重視していることを示します。入居率の向上や、施設の評判向上に寄与する可能性があります。
コスト面でのメリットもあります。高齢者の自立度が向上することで、介護度の進行を遅らせられる可能性があります。起き上がりや立ち上がりを自分で行えることで、筋力の維持につながり、寝たきりになるリスクを減らせます。長期的には、介護度の進行を遅らせることで、介護にかかる人件費を抑えられる可能性があります。
施設で高齢者が使いやすいベッドを導入することで、利用者の自立支援、介護者の負担軽減、転倒事故の減少という3つのメリットが得られます。


